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労災の治療に健康保険を利用した場合の対応

  • 文責:弁護士 上田佳孝
  • 最終更新日:2022年4月13日

1 労災保険と健康保険の関係

健康保険法55条は、被災者の治療について、労災保険による治療費の支給対象となる場合については、健康保険を利用することができないと規定されており、労災保険が健康保険に優先すると定められています。

そのため、労災で負傷したにもかかわらず、健康保険を利用して治療を受けた場合には、健康保険との調整が必要となります。

ここでは、労災の治療について、健康保険を利用して治療費用を支払っていた場合の手続きについて、ご説明します。

2 健康保険を利用した場合の流れ

⑴ 被災者を被保険者とする健康保険組合あるいは国民健康保険の担当部署に連絡を入れて、労災認定された(る)負傷について、健康保険を利用したことを報告します。

⑵ 健康保険組合等からは、健康保険の適用を止め、これまで健康保険組合等が負担した負担分を支払うように(返還するように)請求されます。

この場合には、支払金額と支払いのための振込口座が連絡されることが多いようです。

⑶ 被災者が健康保険組合からの請求に応じて支払うと、健康保険組合から負担額の振込を受けたことを証明する書面が送付されます。

⑷ この書面と被災者自身が負担した治療の領収書を添付して療養の費用の請求を行います。

3 特例

治療が長期間に及んで返還額が大きくなっている場合など、労災保険給付を受ける前の時点で健康保険組合に支払いをすることが経済的な理由で困難な場合には、労働基準監督署に申し出ることで解決できる場合があります。

このような場合には、労働基準監督署が、被災者が負担した療養費用を支給するとともに、健康保険組合が負担した療養費を直接健康保険組合に支払ってくれることがあります。

4 労災保険の利用については弁護士に相談を

労災保険の適用がされる事案であるか判断かつかない場合、あるいは、労災保険の適用が明らかであるにもかかわらず会社が利用を拒絶する場合など、やむを得ず健康保険の利用について迷ってしまう場合もあるかもしれません。

このような場合には、1人で悩まず、労災保険に詳しい弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。

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